ネタバレ有り::映画「君たちはどう生きるか」の感想

 


10年ぶりの宮﨑監督の作品でした。そして、考えれば、10年前、風立ちぬを映画館で見たときに、それはそれは大泣きをしたものでした。それから、引退宣言があり、撤回があり、そして、今回の映画、「君たちはどう生きるか」が公開されました。

この映画、皆さんもご存じのように、前情報が一切ない状態で公開されましたので、7月14日公開というのもすっかり忘れてしまっていて、ヤフーかなにかのサイトで、「14日公開です」をみて、

「えっ、もう公開!?。忘れていた」

というのが正直な所。仕事も公開日に休みを入れてなかったので、一番近い休みの日に映画館へと足を運びました。

そして、その感想は…。

「すばらしい。本当に素晴らしい夢のような映画でした。ジブリらしく、そうでないところも含めて、宮﨑監督120%原液直飲みした感じ」

というのが感想です。

これからの感想については、ネタバレ有りになりますので、すいません。ネタバレ嫌な方は、映画をご覧になって、またこのブログにいらしてください。


ネタバレありです。

初っぱなは太平洋戦争中の夜、空襲警報が鳴り響き、東京が火の海になっているシーンでした。うん、なるほど、これは「火垂るの墓」とそっくりだ、と思い、見ていました。そして、さすがのジブリ、画力と表現力が凄く、戦争は怖い、と正直思いました。火の海の中、主人公である眞人の母親が空襲で焼け死んでしまいます。火垂るの墓のシチュエーションとそっくりで、また、これは宮﨑監督の心に深く残っている印象が映画になっているんだと分かります。

主人公、眞人は14歳くらい。思春期真っ盛りで、なんとなく、エヴァンゲリオンのシンジ君を彷彿とさせる感じでした。眞人の家庭はかなり裕福らしく、父親は軍需工場の経営者でした。彼は母親を失って後、疎開をします。

疎開先には、父親の再婚相手がおり、眞人には継母ができました。継母はナツコといい、既に妊娠をしており、眞人にお腹を触らせて、

「貴方の弟か妹がいるのよ」

と優しく接します。ですが、眞人はまだ立ち直っていなく、どこか頑なな印象を受ける態度をとりました。そりゃそうですよね、いきなり父親の再婚相手、しかも妊娠しているよって話を持ってこられて、そらそうですか、という受け入れることは難しい時期の眞人には無理だと思います。

眞人の疎開先は大きな屋敷でした。そこにはアオサギが一匹住んでいて、住民たちをのぞき見するような鳥がいたのでした。またばあやたちもおり、お手伝いさんとして住んでいるようでした。またこの屋敷の敷地には不思議な塔があり、ナツコから塔について説明を受けます。大叔父が関わっており、忽然と姿消してしまったということも聞きました。

詳しい話は映画本編に譲りますが、眞人は疎開先の学校に行くことになりましたが、結局、初日にいじめに遭ってしまいます。このあたりも、なんとなく、エヴァンゲリオンを見るような…と思いながら、ただ、眞人は帰り道、道ばたに転がっていた石を手に取り、自分の頭を自分で石で殴りました。当然、大けがをすることになります。このときの描写は血の描写が、ポニョっぽい感じで、たくさん出血したというのを描きたいのが分かります。家に帰ってみれば、大騒ぎになりました。後に、眞人は、このときに出来た傷を

「自分の悪意だ」

と言いました。自室で寝込んでいると、アオサギが入ってきて襲ってきます。木刀で立ち向かう眞人、アオサギは「母が貴方を待っている、死んでなんかいませんぜ」としゃべり始めます。眞人は外に出てアオサギともめますが、体に蛙たちに包み込まれるような体験をします。

このあたりがファンタジーが入ってきます。夢の世界の入り口です。

ストーリーについては、別のサイトに任せますが、このときのアオサギの言葉は間違いではありませんでした。ただ、時系列で考えれば、間違っているのですが、既に時間の概念がない世界に入り込みつつ有、アオサギが言っている、母親は死んでなかったことは、後に塔にはいったことによって証明されます。眞人は、アオサギの羽で弓矢を作りますし、その時に、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を読んで、母親からのメッセージも受け取り、涙します。このあたり、宮﨑監督がこの作品にこの名前をつけた理由でもあると思いました。まだ僕は吉野源三郎は読んだ事はないですが、戦前戦中は教養書として位置づけられていたそうですので、読んで見たいと思っていますが、かなり心に影響を与える書物だと言えそうです。

ちなみに、アオサギの羽で弓矢を作るのですが、矢羽根を取り付ける時に、糊の代わりに飯をかみ砕いて糊にするのですが、なかなか生々しいシーンに映りました。後に、この矢は「風切りの7番」という名前がつきます。

そうしていくうちに、継母であるナツコはつわりで苦しんでいるのですが、眞人に会いたいというのですが、眞人はまたも素っ気ない態度を取ってしまいます。これは仕方が無いすれ違いだと思いますが、後に、ナツコは塔の中で、眞人を一度拒絶する原因になったんだろうと思います。

ナツコは森の中の塔に失踪してしまいます。屋敷中は大騒ぎになるのですが、眞人はそこに向かうナツコを見ていましたので、後を追います。その時に、ばあやの一人であるキリコと一緒に向かうのですが、塔に入ってから一緒に閉じ込められてしまいます。アオサギの一枚かんでいて、眞人の母親の偽物を見せたりしたせいで、眞人は怒って、矢で射ってしまいます。そのせいで、アオサギは半鳥人の姿から元に戻れなくなってしまいます。

そして、下の世界というところに、眞人とナツコが落ちていきます。これは一種の堕天の話かな、と思いました。半鳥人であるアオサギは天使、眞人は名前の通り人、ナツコはここで別れてしまいます。

下の世界は、まさに、ポニョの世界です。死の世界というか、死を連想させる牧歌的で有ながらどこか寂しい海の風景。そう、これは千と千尋の神隠しの話でもあると感じました。

眞人はペリカンの群れに襲われ、「我学ぶものは死す」の門を開けてしまいます。このあたり、強く死を意識したものであり、どうするのかと思っていたら、通りすがりの船乗りのキリコに救われて、彼女の仕事も手伝うことになります。このあたりシーンは結構グロいものがあります。大きな魚をさばくシーンなどがありますが、内蔵の描写など結構しっかり描かれています。

眞人が大人になるイニシエーションだったのかな、と今から思います。あらすじは省略しますが、ガフの部屋なのかな、と思うシーンでした。死の世界であると同時に、魂の蔵、つまり、生まれる前の世界でもあるように思いました。そこで、老いたペリカンとも会話をするのですが、このシーンは「もののけ姫」のようでもありました。丁寧に土葬をする眞人は一段階成長をしたようなそんなシーンでした。眞人が水を飲むシーンがありましたが、喉仏がありましたね、そこから年齢が推察できます。

アオサギはナツコの居場所を知っている、ということで、この世界を離れます。少し戻りますが、キリコが眞人を救ったときに、眞人が

「もしかしてキリコさん?」

「なんであんたがあたしの名前を知っているんだよ」

という会話と人形になった使用人の老婆たち、なんとなく、このあたりは千と千尋の神隠しっぽいなーと思うところがありました。まあ世界が一緒なんでしょうね。どうして眞人がキリコだとわかったのか、未だに分からないのですが、なにか感じるものがあったんでしょう。しゃべり方なんかも老婆キリコと同じだったので、それで気がついたのかもしれません。

塔の外では、眞人もナツコもキリコもいなくなってしまったので大騒ぎになってしまいました。近所の人も含めての大捜索が開始されており、使用人のばあやの一人が、もしかしたら、と塔の正体を話始めます。

塔はもともと大きな隕石で、それを建て屋で覆ったのが塔の正体だということでした。なんとなくこのあたりは、スティーブンキングっぽい話になっているな、と思い見ていました。

実はこのあたりから、どうしてもトイレに行きたくなってしまい、席を立ってしまったので、前後がわかりません、すいません。

人食いインコの集団がおり、そこで眞人たちは襲われます。そこで、ヒミに救われます。ヒミは、火の中から出てきたので、火見なんでしょうけど、このあたりはなんとなく、ハウルの動く城のカルシファーを思い出させてますが、もっとシリアスな雰囲気です。

ヒミは炎の力をつかって眞人たちを救い、世界を跳ぶ力をつかって、ドアがたくさんある世界に案内をします。その時に、外の風景を見ますけど、塔があり、

「塔はどの世界にもある」

という事を教えます。なんとなく、スティーブンキングですよね。スティーブンキングに文字通り、ダークタワーという作品がありますので、本当によく似ていると思いました。

ナツコは産屋ないることもわかり、行こうとするのですがインコの軍隊におさてしまい、現実世界に通じる扉132のドアを開けて一端逃げます。ドアの向こうでは、父親が戻ってきた眞人を見つけ、眞人がインコになったと騒ぎます。

元の塔の世界に戻り、産屋にたどり着きますが、この産屋が禁忌らしく、眞人たちは知らずに入ってしまいますが、ナツコに拒絶されてしまいます。紙垂が空間中に乱舞して眞人たちは気絶してしまい、インコたちに捕まってしまいます。

後に調理場でインコに変装したアオサギに助けられますが、インコたちの王、インコ大王はヒミを大叔父のところに連れて行こうとして後を追います。ですが、階段を断ち切られ、なかなか追いつくことが出来ません。結局の所、大叔父のところに着くのですが、13の穢れていない石でバランスをとり良い世界を作ってほしいという話になります。

もうここまで来ると色々と話が前後しているので、ついてこられない人もいるんじゃないかと思いました。ストーリーが前後するし、完全なファンタジーになっているし、説明もなかなか一直線にはできない話になっています。これが、多分、ストーリーが分からないとう人たちの意見じゃないかなって思います。

いろいろあって、下の世界が崩壊をし始めます。ナツコの事を母親と認める眞人、眞人の母親になるというヒミ、本当に色々あって、132のドアから眞人は現実世界に戻ります。キリコの人形は元の婆やキリコに戻り、アオサギは眞人の前から姿を消してしまいます。

2年後、戦争が終わり、ナツコは子どもを産んで眞人には弟ができることになります。眞人が自室から出て行くシーンで終わり。


というかなり無理矢理書いてみましたけど、ともかくジブリエキスが濃い。そして、思ったのが、これ。




まさにこの映画をみた時と同じ印象でした。
そして、


と印象が似ている、塔繋がりですが、スティーブンキングの香りもしました。
まだ一度しか見ていないので、なんとも言えないところはあるのですが、

宮﨑監督の自身の心理的体験+ジブリのエキス+その他諸々=君たちはどう生きるか

であり、マジで原液。
賛否両論はありますが、傑作だと思います。ですが、これを理解しようとするのはやめた方が良いと思います。これは絵画鑑賞と一緒で、個人個人感じるものが違う美術作品なんだと思います。トトロとか、もののけ姫とか、そういうお話とは、少し違う作品であると思います。風立ちぬにも似たところがあるのですが、それより濃いお話です。

また感想に追記することはあると思いますが、とりあえずここまでにしたいと思います。

見に行っていない人は、早く見た方が良い作品です。