Airbnbなどに見られる民泊の問題点


 

報道されたのだが、以下のニュースをもう知っている方も多いと思う。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20151105-OYT1T50068.html
  
 京都市の5階建てマンション(44室)の大半を借り、無許可で中国人観光客らを宿泊させたとして、京都府警が、東京の旅行会社の男ら2人について旅館業法違反容疑で捜査している

という話なのだけど、実はこの無許可民泊、かなりの数があるはずだ。

筆者はなんの因果か宿泊業に関わりがある人間なので、このニュースは見過ごせない。業界と深い関わりがあるので、あまり突っ込んだ発言をすると問題があるのであまりバラすことはできないが、宿泊業界内では非常に問題視と懸念をしている懸案事項でもある。宿泊業界というのは、残念ながらロビー活動が下手というかあまりコネクションがなく、政治に対してはあまり強い団体ではない。特にゼネコンなどの団体と比べると天と地ほどの差があり、何かと痛い目を見ている団体とも言えよう。

 業界内のパワーバランスやパワーゲームにはあまり触れないが、こういうことに深く関わりがモノとして何がまず思うことかというと、心配なのである。何が心配かというと、自分が宿泊業で観光関係に関わりがあるので余計にだろうが、火災予防や衛生環境などは大丈夫かとというものである。宿泊業というのは普通の人からすれば、早退して仕事があるように思えないらしい。これは仕事の特色でもあるのだが、つとに苦労している姿をあまり表に出すことをしない、ヘタすれば美学に反するということで全く出さないところも珍しく無い。ホテルというドラマがあるのだが、すべからず、宿泊業のドラマというのは面白いと感じるだろう。もちろんあのようなことが毎日起きているわけではないが、おそらく利用者が思う以上に裏方が動いているのは間違いがないだろう。

 宿泊に際しての料金が高い、という話がよくでるが、実は利益率はそんなに高くない。むしろ高いのであればそういうお金を政治的に回してもっと業界全体が力を持つのだろうが、それがないということは察することができるだろう。
 変な愚痴になってしまったが何が言いたいかというと、住んでいることと一時的に宿にしていることはイコールではなく、使い勝手も違うということなのだ。

 もちろん、その宿というのは毎日訪問者滞在者が変わるものでこれはセキュリテ
ィや事故の話も出てくる。

以下に少しまとめてみた。

民泊と宿を比較した際に問題となるであろうものを列挙してみた。

1.衛生環境
2.防災環境
3.保安・安全環境
4.犯罪防止環境
5.行政との連携
6.法律などの問題
7.クレームや係争事案についての環境
8.その他の非常時の対応
9.瑕疵担保責任
10.周辺住民との兼ね合い、地域社会との関わり方
11.施設の性質上の社会的役割に対しての考え方


 まあ、これを書き出すまでに実際に五分もかからなかった。
 やたら環境環境とお題がつきまとうが、それもそのはず、宿泊業というのは、環境を売り物にしているからである。

 しかもその環境のというのは、現代において、日常的に当たり前に自分の側に存在しているものであり、生活の一部としてまた、その拠点として必要なものを指す。

 宿泊業というものがなくなってしまえば、それこそ、道端や公園で野宿をせざる得ない環境が出てくることは容易に想像できよう。

 ここで、一つ断っておきたいが、民泊のすべてを反対しているのではない、という大前提があるのでそこは留意していただきたい。

 まず、一つ一つ説明をしていくことにしよう。

1にある「衛生環境」

まずこれは人間が生活していくうえで絶対的に必要なものである。不潔な環境では人間はすぐに病気を得てしまい、まず必要な活動ができなくなってしまう。中世暗黒時代のヨーロッパはこの不潔というものに対してかなり無頓着であったため、ペストを流行させてしまい、人口が大幅に激減をした。ネズミなどの害虫や害獣が媒介する病原菌に対して無知識であったからだ。話は極端かと思うのだが、これくらい清潔というのは大事なのである。不潔な環境にいたくないというのは人間の本能的な欲求に近いだろう。

 しかし現代、残念ながら、「不潔であっても清潔に見せかけるようなことはできる」のである。一見すると清潔そうだが、その実、不潔な可能性があるのだ。宿泊業界ではお客様がチェックアウトをすると部屋を清掃する。もちろんホテルの度合いによりけりだろうが、大体において最低限毛髪が残るようなことはしない。もちろん殺菌や消毒、消臭もするし、必要であればオゾンで殺菌消毒消臭までする。まあすべてのところがそこまでしないとしても、それくらいはする気概はあるし実績はあるのだ。

 さて、商業的な民泊(変な言葉なのだが)ではどうだろうか。きちんと布団を天日干しして、消毒殺菌具合を確認して、前のお客様の痕跡を残さず、髪の毛一本に至るまできちんと確認をしているのだろうか。
 トイレ、布団、部屋、そのあたりは、できうる限り清潔にしているのだろうか。手を抜いていて、ファブリーズで消臭するだけだったり、年中そ同じ布団を使用し、たまにしか洗濯をしないような状態になってはいないだろうか。

 あなたならば、見知らぬ数十人の人が使用した布団を、ファブリーズ一つしただけで、清潔であると提供されて、何も抵抗はないだろうか。
 あとは病気の問題がある。たとえば、ノロウイルスが出た場合、商業的民泊の場合、きちんと隔離をし、保健所に届け、感染した経路を特定し、またはそうであろう経路を消毒し予防し、地域の保健所に届け、必要であれば医師を紹介して、介抱までしてくれるだろうか。自分はそんなことない、ならないし、なってもその時だよ、と思うのであれば、あなたは食中毒でひどい状態になった時、見知らぬ土地に雨露も凌ぐことができないところに放り出されて、まったく大丈夫と思うのであれば大したものだと私は思う。

 ノロウイルスだけとは限らない、ボツリヌス菌だって、他のものだっていくらでもリスクはある。民泊しているところは問題ないよ、というであれば、外食先も同様ですか、と問いたい。

 食中毒など、ちょっと油断すれば、どこででも起きる。
 
 もちろんそういうものだけでなく、ガセを引いた、原因はよくわからないが体調不良だってあるだろう。それらの面倒を民泊OKしてくれた人がみんな快く世話を焼いてくれると思うのであれば、それは考えなおしたほうが良いだろう。

2にある「防災環境」

 スバリ、これは火事のことである。

 宿泊施設では皆が思う以上に厳しい法規制があり、毎年これをクリアしなければ営業ができない。これは、ホテルニュージャパン火災、千日デパート火災、新宿雑居ビル火災の強い影響がある。この火災で亡くなった方には心より感謝と冥福を祈りたい。なぜならば、彼らの犠牲で火災というものに対して厳しくなったからだ。

 おそらく民泊をしているところに非常口などないだろう。
 想像してみてください。

あなたは民泊で安いところに泊まることができ、その日は床につきました。
ふと起きると、変な匂いがし、火災だと気が付きます。
遠くで鳴る家庭用火災警報器、やがてそれも消えます。
業火で燃えるぱちぱちという音、
迫る熱、
そして何より煙で呼吸ができなくなって咳き込んで喉も痛いし、目も痛い。あなたは助けてと言い、窓に近寄る。
窓は開くかどうかすら怪しい。
ふとドアを見ると、ドアが燃え始めてきた。下からは炎が舐めて上がり、ドアを黒くしいく。
毛布をかぶったが、これは可燃性の安物の毛布。炎は伝いあなたは毛布を捨てる。
多少の知識で煙を避けるため伏せていたが、炎は床の絨毯を伝ってあなたのパジャマに食らいついた。
あなたは熱い中炎を払うが呼吸もままならず、死にたくない、と思いながら炎を払う真似事だけしていくが、もう自分は燃えている、あなたの意識は激しい激痛のなか暗転していってしまった。

 宿泊する施設には、火災報知機があり、何重にも安全対策が取られています。出火すれば必ず分かる仕組みに今はなっています。
 そして、たとえ従業員がなんらかの事故などで声がけできなくなっても、自動放送や誘導装置、防火扉、防煙壁、自動通報装置、非常用シューター、非常ハシゴ、それから、防炎性の絨毯から毛布、あらゆるものが難燃性であり、できるかぎりのものであなたを火災の脅威から守ろうとしています。従業員も命がけで誘導しようとしますし、必ず誰が起きていて、火災は初期消火、避難誘導、たとえ建物は燃えてしまっても、お客様の命、体はあるようにしているはずです。
 そして、火災に対しての保険がおり、医療から焼失してしまったものすべてが弁償されます。

 それは火災保険が、個人の火災保険と異なり、宿泊業専用の保険に加入しているからです。

さて、民泊では同条件があるのでしょうか、という話。


3にある保安・安全環境です。

 フロントではお客様の顔を出来る限り覚えるようにします。なにか不審なことがあったらすぐに駆けつけるようにしています。出来る限り余計な部外者を排除し、宿泊しているお客様に安心して使用していただけるように心がけているのは、これはどの宿・ホテルさんでも同じでしょう。

 妙な雰囲気や、同宿している人からなにかあれば、だれかすぐに駆けつける。なにかお客様に危険があれば、まず安全を確保しようとするホテルマンは多いでしょう。
 あなたがもし民泊を利用したとして、そのホストの人たちは、そうである、といえるのでしょうか。職業だからできること、していることもあるはずですが、それは多くの人の手によって成り立っているものであり、一人ができることには限界があります。
 
 そういうことに解決できるオールマイティーな人間が常時いるのでしょうか。という話です。
 ホテルの従業員はフロントで見えている人たちだけではなく、その後ろにはフロントにいる以上、おそらくお客様が想像する以上の人が働いてサービスを提供しています。集団だからできるのです。民泊に同じような力があるとは到底思えないのです。

4.犯罪防止環境

 これも3と深い関わりがあります。
 このことが特化したのは、警察との連携の話があり、5の行政との話とも関わってきます。
 実は指名手配というのは、公開と非公開というものがあり、非公開については、宿泊業は情報を提供されています。これは表立って言いませんが、チェックインの際、フロントの人間、または専任者は非公開の指名手配の人間ではないか、必ずと言っていいほどチェックしているでしょう。
 なにか犯罪の匂いがしそうなときには、地域の警察と連携をしていて、他のお客様に影響がないように、またプライバシーが侵されないように配慮しながら、犯罪を未然に、または進行中の犯罪を抑止、停止するように動いているのです。

 しかしながら、現実はいいホテルもあればそうでないものもあり、実のところ、

 国際社会からは日本はテロリストの隠れ家の温床と揶揄されていることも事実なのです。しかし、法律が改正され、去年辺りからどんどん摘発されています。しかし業界が警察と一丸となって犯罪撲滅を進めているのに、かたや民泊でノーチェックで隠れ家的に転々とされては、もう本当にどうかしているとしかいえません。
 民泊でパスポートの写しを取り、怪しければ手配書を確認し、宿帳をしっかりとっている、というものがどれだけの民泊が今現在しているのでしょうか。

5.行政との連携

 これは、保健所や旅館業法などの話である。まあ言うまでもないが、民泊というのは旅館業法もなにも取得してない上に、保健所からの立入検査、や継続検査もないわけである。
 
 単なるお墨付きではない、というその他に、たとえば、少し前に話題になってエボラ話がある、ありえない話ではあると思いたいが、万が一の話がある。
 自分がホスト側であり、民泊を生業としているようならば、これは考えておいて損はない。自分がホストで真似ているゲストが急病になった場合、なにか感染力の強いものが潜伏期間をおいて発症した場合、すみやかに保健所に届け出なければならない。保健所もまさかそんなところで民泊が行われているとは思わないだろうから、一定期間は混乱した状態になるだろうことは予測に難くない。

 自分がゲストの場合でも、ホストの場合でも行政との連携がないということは、何かあっても自分たちがバックアップや何もなく、その上多くの関係ない人たちに迷惑をかけることがありうるというリスクを承知して置かなければならない。

 保健所だけでなく、警察も消防もこの項目に入ると言ってもいいだろう。何か犯罪に巻き込まれた時に、全員が混乱し、全員が多大な迷惑を被ることは簡単に想像できるだろう。

6.法律などの問題

 これは立法が全く現状に追いついていないという話だ。もっとも、これに限らず、立法というのはどうしても時代を跡追いすることになってしまうので、このような自体は策定時は想像もしてなかっただろう。
 
 そうかといって、既存の旅館業法から保健法、消防法、食品衛生法、建築基準法から様々な法令に従い立入検査を始め遵守をしている、そういう建物や業務と、何も届け出指導をしていない民泊。どちらがどう感じるのかは言うまでもないだろうと思う。

7.クレームや係争事案についての環境

 人間、旅先で良い思いばかりするのではないし、虫の居所が悪ければそれだけでも苛々するものだ。
 なにか自分が気に入らないことがあれば、きちんとそれを伝えて是正してくれるところは民泊にあるのだろうか。上記の記事にあったフロントらしきものはそんなふうには見えない。
 旅館業法ではきちんとフロントを設けて、宿帳の記載を義務付けている。ラブホですら(業界ではファッションホテルと言うのだが)、フロントはきちんとあり、いつでも繋がるようになっている。民泊のホストサイドがそのように交代してくれるかはちょっと微妙なところもあるのではないだろうか。クレームというのは誰でも言うものであり、その本質は不快である、というものから来ている。なので、クレームを聞いてもらえない、言うことができない、というのは苦痛を強いられ続けるわけで、旅先で大変なストレスを強いられることになるだろう。生活する基盤があるのだから、旅は楽しい。

8.その他の非常時の対応

 実はこれは重大だ。
 日本は火山大国であり、地震大国である。
 こんなこというのは釈迦に説法だが、それは日本人だからだ。
 外国人のたいていは地震など経験したことはないのだし、火山はあってもごくごく少数だろう。火山は比較的余地ができるのでこれは対処できるかもしれない。

 しかし火山情報などは早めに住民に通達できるだろうが、あえてそういう危険な地域に泊まりたいという冒険野郎(というか馬鹿野郎)がいるかもしれない。宿泊業許可を得ているところならば、消防関係から噴火予測が起きた時点で協会などを通じて情報を提供、さらに宿泊の停止を命じることもあるだろう。

 しかし、民泊はどうだろうか。

 ホストが避難して、よくわかっていない冒険気取りのゲストが民泊をしたいと言って残った場合、誰が彼らにほんとうに危険であると知らせて避難をさせるのだろうか。

 火山でこれならば、地震なんか以ての外である。

 東海地震予知情報など、外国のゲストは知る由もないだろう。大きな地震が起きて被災してしまった場合、ゲストを避難所まで連れて行き混乱の中、手配をし、無事に帰宅させるだけの手腕を持つ使命感あふれる有能なホストはどれくらいいるのだろう。私はそんなにいるとは思えない。ホストサイドの生活基盤がズタズタにされ、集団の力もなく、独力のみでゲストに対して責任が全うできるのだろうか。

9.瑕疵担保責任

 用語の説明を抜粋します。

瑕疵担保責任
売買の目的物に瑕疵(取引上普通に要求される品質が欠けていることなど、欠陥がある状態のこと)があり、それが取引上要求される通常の注意をしても気づかぬものである場合に、売主が買主に対して負わなければならない責任。

https://goo.gl/S0m4OH


 要は簡単にいえば、なにか問題があった場合の責任の所在の話である。これは物品を前提としていると勘違いされやすいが、商取引全般それがあたいする。

 ケース・バイ・ケースの可能性があるが、もし宿泊契約が履行されないという契約違反に当たる場合、どうやって補償するのだろうか。

 あなたが現地にいって、宿泊できないと言われ、放り出された場合、本来宿泊させるべきホストは他の民泊などあたってくれるだろうか。

 ましてオンシーズン、かなり混んでいる場合、そうとう困難になるだろうし、予定していた予算はオーバーするだろう。

 宿泊業では連携をしている場合が多いので、まずこういった状態に陥ることは少ない。というかありえない。

 契約の履行だけとってもこの話があるのだから、宿泊に際してはもっと出てくる。なにかあっても責任はないと言われ、解決できず、クレーム窓口もネットのメールだけ。あなたはそれで良しとできるだろうか。

10.周辺住民との兼ね合い、地域社会との関わり方

 京都のこの事件、周辺住民が大変な迷惑を被っているのはテレビでご覧のとおりだと思う。故意ではないが、地元の人に迷惑をかけてしまう場合があるかもしれない、文化の違いや習慣の違いなどがあるからだ。

その場合、あなたは貴重な旅行の時間を削って対応することになる。しかも美方もいない上によくわからない土地柄での話なのだ。
 もちろんプライバシーなど丸裸にされてしまうだろう。
 ましてや集合住宅ならばそのようなことは、すぐにでてくるだろうし、ホストに行くべき地域住民のクレームがゲストに行くかもしれない。

 知らないわからない、では通じない。

 民泊を利用している以上、あなたは地域住民からみれば関係者なのだ。

11.施設の性質上の社会的役割に対しての考え方

 宿泊施設にはたいていバンケットと呼ばれる英会会場や会議室が設置されている。地元の人が意外と利用しており、公民館などではまかない得ないことに対してもサービスを提供している。また、宿泊者とのなかだちをし、観光業界に寄与している。例えば統計数だ、意外と大事なファクターである。民泊はおそらくそういう統計情報は収集していまい。これらの情報に基づいて、政治や行政、それらから抗菌の動きや地域安全などが連動している。

 民泊はそういうものに一切寄与していないといえる。
 自分だけの利益だけの独りよがりの商売とも言えよう。


 このように、いろんな話がある。

 もちろん民泊側が改善をしていき、これら諸々の問題を克服することしていくだろう。
 
 しかしそうした時、それはもう民泊ではないのではないだろうか。

 結局のところ旅館業法できちんと旅館業を営んだほうがいい、と言う結果に帰結するところは多くはないだろうか。

 勘違いしてほしくないのだが、民泊がダメだと言っているのではない。
民泊は民泊の良さがあり、決して一概に禁止することは賢い選択だとは思わない。
 しかし、宿泊業に旅館業法があるように、民泊にも一定のルールや法律が必要ではないだろうか。

 京都の場合は、「商業的な民泊」をしてしまったためにこのような事態になってしまった。しかしある意味でこれは仕方がないことなのかもしれない。

大陸人たちが日本の法律など知らぬまま、自分たちの思うようにやって何が悪い、禁止されていないのだからやって何が悪い、というのは、彼らの文化や気質からして仕方がないことなのだ。

 私達があまりに外国人なれをしていないことがそもそもの問題の一端でもあろう。

 しかし、私はこう思うのだ。

「おもてなしの心は変わらないのだと信じたい」、と。